日本は水道の仕組みがしっかりと整備されています。日常生活の中で飲み水としてはもちろん、炊事や洗濯等の家事、お風呂やトイレ、手洗い等たくさんの水道水を「生活用水」として使っています。家庭だけでなく、職場や外出先でも水道水を使うシーンは少なくありません。
そんな私たちの生活に欠かせない水道水ですが、どのような仕組みでお水が蛇口まで届けられているのか知っている方は少ないかもしれません。
今回の記事では、日本の水道水の品質や歴史、自然にあるお水が水道水になるまでの仕組み等を解説します。
目次
「日本の水道水は安全で高品質」と聞いたことはありませんか。 日本の水道水はしっかり管理されていて、世界の水道水と比較しても高い品質を保っています。
はじめに、日本の水道水の品質や歴史について詳しく見ていきましょう。
実は、水道水をそのまま飲める国は決して多くありません。令和4年の段階では、水道水をそのまま飲める国は日本を含めて11か国のみです。※1
お水を安全に飲めるようにするには、病原菌を殺菌しなければなりません。日本の水道水は塩素によって消毒されているので、安全に飲むことができます。
しかし、塩素は消毒に欠かせない一方で、濃度が高いと人体に影響があります。そのため、日本では蛇口での残留塩素濃度を1mg/L以下に抑えるよう定められていて、これはWHOのガイドラインである5mg/Lを大きく下回っています。※2
さらに、各都道府県の浄水場では、安全性に加えておいしさも追求した取り組みを進めています。
例えば、東京都は国の基準よりも高いレベルの「おいしさに関する水質目標」を設定していて、そのまま飲んでも味や臭いが気にならない水道水を提供しています。※3
水道水の品質を保つために、厚生労働省は以下の検査項目を定めています。※4
上記に加えて、令和4年には水質管理目標設定項目のひとつである農薬類について、対象農薬リストとして58の項目が設定されました。※5
このように、水道水の安全性を保つために水道法で細かく検査項目と基準値・目標値が定められていて、これを満たすお水が水道水として提供されています。
日本の水道の歴史は長く、江戸時代から存在していました。江戸時代の水道は「上水」ともいわれ、お水が石や木で造られた水道管を通って井戸に入り、そこからくみ上げて飲料水や生活用水として使用する仕組みでした。
水道の起源は天正18(1590)年、徳川家康の入府で江戸時代に入るころに造られた小石川上水だといわれていますが、確実なものは徳川家光の代で完成した神田上水です。その後、上水の整備は進み、江戸時代の後半には神田・玉川の2つの上水が多くの人々の生活を支えました。※6
現在も玉川上水は残っていて、水道原水の導水路等として使われています。※7
河川等自然に存在するお水が水道水となって私たちの元に届くまで、大きく取水・浄水・給水の3つのステップに分かれます。
ここでは、水道水ができるまでの流れを見ていきましょう。
水道水の元となるお水は、主に河川・ダム・湖沼・地下水等です。※8
水道水になるお水の多くは河川やダムのお水で、取水堰といわれる設備で川をせき止めて取水します。川のお水には砂や泥が混ざっているので、沈砂池(ちんさち)という人工池で取り除いてから、導水路を通って貯水池や浄水場へと運ばれます。※9
河川から取り入れたお水は、そのままでは安心して飲むことはできません。そのため浄水場でろ過や消毒等、安全性の高いお水にするための処理をおこなっています。
一般的な浄水の流れは、以下のとおりです。※10
このようにいくつものステップを経て、安心して飲めるお水ができあがります。
水道水の安全とおいしさをより追求するために、東京都では平成元年から高度浄水処理設備の整備を開始し、およそ25年をかけて全浄水場に導入が完了しました。
高度浄水とは、通常の浄水処理よりもさらに不純物等を除去できる処理のことです。強力な酸化力を持つオゾンと、吸着機能に優れた生物活性炭を活用し、従来の処理では取り除くことが難しかったごく微量のトリハロメタン等も除去できるようになりました。
この処理では水道水特有の臭いや有機物も除去できるため、より安全でおいしいお水を提供できています。
浄水場できれいになったお水は、配水池から各家庭までポンプで配水されます。各家庭の前の道路まで配水管を通って運ばれ、配水管から各家庭の蛇口までは給水管と呼ばれる管を通って流れていきます。※10
ポンプは時間帯ごとのお水の使用量に合わせて、配水するお水の量や圧力を調節しています。/p>
私たちが毎日当たり前に水道水を利用できるのは、このように河川からくみ上げたお水を安心して飲める状態にして、さらに各家庭の蛇口に届くまでの間、多くのステップを経ているからなのです。
日本の水道水は安全性に優れていますが、より安心して使用するために知っておきたいポイントがあります。ここでは、水道水の保存期間や蛇口から出たあとのお水の扱い方について見ていきましょう。
「冷たいお水が飲みたいから冷蔵庫に入れておきたい」等、容器に入れた水道水を保存したいという方もいるでしょう。しかし、水道水は塩素で消毒されていますが、いつまでも消毒効果が持続するわけではありません。
東京都水道局は塩素の消毒効果を考慮して、「常温で3日、冷蔵庫で10日」を保存期間の目安としています。※11
ただし、上記の目安は清潔な容器を使って雑菌が入らないようにきちんと保存ができている場合の話です。できるだけ早めに消費して、使いきれなかったくみ置きの水道水は掃除や洗濯に使用しましょう。
かつてはプールに入ったあと、水道水で目を洗うことが望ましいとされていて、学校のプールには洗眼用の水道が設置されていたこともあります。
しかし現在では、残留塩素濃度が0.4~1.0mg/ℓ のプールで水泳をする際には目の粘膜を守るためにゴーグルを着用することが望ましく、水泳のあとの水道水による洗眼も積極的には推奨されていません。※12
プールで泳ぐときはゴーグルを着用したうえで、目を洗いたいときは市販の目薬や専用の洗浄液等を使うようにしましょう。
水道水の安全性を維持するには、塩素消毒は欠かせません。しかし、「消毒の臭いが気になって水道水をそのまま飲むのは苦手」という方もいるのではないでしょうか。
水道水の臭いが気になるなら、残留塩素を取り除ける浄水器や浄水型ウォーターサーバー、そもそも消毒用の塩素が入っていない天然水が届く宅配型ウォーターサーバー等の導入がおすすめです。日本の水道水の残留塩素は健康に影響のない濃度ですが、味や臭いの感じ方は人それぞれなので、もし気になる場合は飲用水には水道水以外の選択肢も検討してみてください。