近年、カフェインの過剰摂取が問題視されているのをご存じでしょうか。
この背景には勉強や夜遊び、パーティー等のお供として、若者を中心にカフェインが多く含まれるエナジードリンクの人気が高まっているという状況があります。また、カフェインはコーヒーや紅茶等に含まれる身近な存在であるだけに、若者だけでなく、誰もが気になるところです。
健康効果もあるカフェインですが、適正に摂取しないと、健康への影響を及ぼしかねません。正しい知識を身に付けておきましょう。
目次
カフェイン中毒とは、コーヒーやエナジードリンク等に含まれるカフェインを過剰に摂取することで引き起こされる中毒を指します。カフェインはタバコやアルコールのように依存性があり、飲み過ぎると慢性中毒症に陥ることがあります。
自動販売機等でエナジードリンクが手軽に購入できるようになってから、カフェイン中毒が急増しました。2011年度からの5年間では、カフェインを多量に含む製品の急性中毒により101人が救急搬送され、7人が心停止、3人が死亡したと報告されています。※1
カフェインを摂取すると、交感神経を刺激し代謝を上昇させるため、覚醒作用や解熱鎮痛作用、強心作用、利尿作用等の作用があります。一方で、不眠やめまいといった副作用も引き起こすことがあります。
実はカフェインは、モルヒネやニコチンと同じアルカロイドの一種で、その依存性や急性・慢性中毒が問題となっています。※1
問題になってしまう理由としては、神経鎮静させるアデノシンという物質と化学構造が似ていることがあげられます。体内のアデノシンが作用する部分にカフェインが結びついてしまうと、アデノシンの働きが弱くなり、神経が興奮状態になってしまうのです。※2
カフェインを過剰摂取すると、中枢神経系が刺激され、めまいや心拍数の増加、興奮、不安、震え、不眠等の症状が現れます。さらに消化器官が刺激されると、下痢や吐き気、嘔吐を引き起こすことも珍しくありません。※2
軽症から中等症のカフェイン中毒の場合、食欲不振、吐き気、嘔吐等がみられます。重症になると、低血圧やけいれん、不整脈等の深刻な症状も現れ、最悪の場合、死に至るケースもあります。※4
また、長期的な摂取による影響にも注意が必要です。例えば、妊娠中の女性が高濃度のカフェインを摂取すると、胎児の発育を阻害して、低体重児が生まれる可能性も報告されています。※2
カフェインは、自然界に広く分布しているアルカロイドの一種として、コーヒー豆やカカオ豆、茶葉等にも含まれています。これらを原材料として作られるコーヒーやお茶が、一般的なカフェインの摂取源です。
カフェインは特有の苦味を活かし、食品添加物としても用いられるようになっています。目覚めを促したり、疲労感を軽減したりする目的で、カフェインを添加している清涼飲料水が、エナジードリンクです。風邪薬や眠気防止薬、酔い止め薬等、市販の様々な医薬品にも、カフェインが含まれています。※2
食品・飲料の種類 | 量 | カフェイン含有量 (約) |
---|---|---|
エナジードリンク | 1本 | 36-150mg ※製品によってカフェインの濃度や内容量は異なる |
ドリップコーヒー | 100mL (1杯) | 60mg |
インスタントコーヒー(粉末) | 2g使用した場合 | 80 mg |
紅茶 | 100mL (1杯) | 30mg |
ウーロン茶 | 100mL (1杯) | 20mg |
緑茶(煎茶) | 100mL (1杯) | 20mg |
緑茶(玉露) | 100mL (1杯) | 160mg |
ほうじ茶 | 100mL (1杯) | 20mg |
玄米茶 | 100mL (1杯) | 10mg |
抹茶 | 1.5 g使用した場合 | 48mg |
私たちは1日にどの程度のカフェインを摂取してもいいのでしょうか。ここでは、カフェインの摂取量の目安を紹介します。
厚生労働省によると、カフェインの1日の許容量の目安は下記となります。※5
対象者 | カフェインの1日の許容量目安 |
---|---|
4~6歳の子ども | 45mg |
7歳~9歳の子ども | 62.5mg |
10歳~12歳の子ども | 85mg |
妊娠中、授乳中、妊娠を予定している女性 | 300mg |
健康な成人 | 400mg |
13歳以上についてはデータが足りず、明確な許容量は判明していません。ただし、1日あたり体重に対して2.5mg/kg以上のカフェインを摂取しないよう注意喚起されています。
そもそも子どもの身体はカフェインの影響を受けやすいため、エナジードリンクを与えないようにしましょう。健康な大人だと、摂取したカフェインの半分は、3~6時間後に尿として排出されます。しかし、肝臓の機能が未発達だったり、低下したりしている場合、排出にもっと時間がかかるのです。※4
また個人差はあるものの、人は1~2時間に1g以上のカフェインを摂取すると中毒症状が現れ始め、5g以上で死に至る危険性が高まります。健康な大人であっても、短時間にコーヒーを8~10杯飲むと、中毒を起こす可能性があるのです。※1
カフェインは上手に取り入れれば、適度な覚醒効果や集中力の向上等、日常生活に役立つ効果が期待できます。一方で、過剰摂取は健康を損なう危険性があるため、正しく取り入れるようにしましょう。ここではカフェイン摂取の注意点を紹介します。※2
コーヒーやお茶等に含まれるカフェイン量を把握しておきましょう。エナジードリンク等は成分表示を見てカフェイン含有量を確認し、過剰摂取を防ぎましょう。
エナジードリンクに含まれるカフェインは酔いを感じにくくするため、アルコールの飲み過ぎや急性アルコール中毒のリスクが高まります。同時に飲むのは控えましょう。
カフェインが含まれる医薬品を服用する際は、コーヒーやエナジードリンク等カフェイン入り飲料で飲まないようにしましょう。カフェインの過剰摂取を防げます。
カフェインの摂取については、国際機関や各国政府から注意喚起やガイダンスが出ています。これらの情報も参考にしてカフェイン中毒を予防しましょう。※2
WHOは2001年の時点で、カフェインの胎児への影響は確定してはいないものの、妊婦にはコーヒーを1日3~4カップに抑えるよう勧告しました。2016年には、1日300mg以上のカフェイン摂取をしている妊婦は、低体重児出生や流産・死産のリスクが高まる可能性があるため、摂取量を減らすよう注意喚起しています。
米国食品医薬品局(FDA)は、健康な大人ならば1日400mgまで(コーヒー約4~5杯分)のカフェインは安全だとしています。コーラ飲料の場合は、カフェイン含有量が0.02%(200ppm)までなら一般的に安全としています。
ただし、妊婦や授乳中の女性、妊娠予定の方、薬を服用中の方は、カフェインの影響を受けやすいと警鐘を鳴らしています。医師への相談を推奨していることも念頭に置いておきましょう。
また、米国小児科学会(AAP)は、子どものカフェイン等の摂取を制限すべきだと主張しています。
欧州食品安全機関(EFSA)は、大人が1回200mgのカフェインを摂取しても、健康リスクは増加しないと発表しました。習慣的に摂取しても、1日400mgまでなら問題ないと結論づけています。
EFSAによると、妊婦と授乳中の女性は、1日のカフェイン摂取量を200mg以下に抑えれば、胎児や乳児への健康リスクは上がりません。子どもに関するデータは不足していますが、大人と同様、体重1kgあたり1日3mgまでは悪影響がないと推測されています。
コーヒーやエナジードリンクのファンが増えた近年、誰もがカフェイン中毒のリスクを抱えているといえます。適量なら問題ありませんが、飲み過ぎないよう注意しましょう。
カフェインには利尿作用があるため、常飲すると水分不足になるリスクもあります。コーヒーやお茶は水分補給にならないため、こまめにお水も飲むようにしましょう。
こまめな水分補給には浄水型ウォーターサーバーがあると便利です。この機会に導入を検討してみてはいかがでしょうか。