水道水の仕組みって?家庭に届くまでの水を知ろう

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洗濯をしたり、入浴に使ったりと、私たちの暮らしには水道水が欠かせません。また、工場や店舗でも水道水が大量に使われています。水道水は「蛇口をひねれば当たり前に出てくるもの」というイメージがありますが、そもそもどうやって私たちのもとに届くのか、とくに意識していない人も多いのではないでしょうか。

そこで本記事では、水道水が家庭にどうやって供給されるのかを紹介します。水道水が家庭に届くまでに、どのようなプロセスを経ているのかを知っておきましょう。

家庭まで届く水道水の仕組みとは?

日本の水道の仕組みは、以下の3つの段階を経て家庭に届けられます。

取水
水道水の元となる水は、主に河川や湖、ダム等の地表水から取り込まれます。
施設で川の水位を調整しながら水を取り込み、沈砂池で砂や泥、ゴミを取り除く最初の処理がおこなわれます。

浄水
取水された水は、そのままでは飲めないため、浄水場でろ過や消毒等の処理をおこないます。一般的な浄水プロセスでは、薬剤を使って小さなゴミを凝集させ、砂や砂利の層でろ過します。最後に、安全な水として飲めるように塩素が加えられます。

給水
きれいになった水は、給水所の配水池に貯められます。
そこからポンプによって、配水管や給水管を通って工場や家庭の蛇口へと届けられます。

また、高品質の日本の水道水は、厳格な管理体制と検査項目によって支えられています。
どのように定められているのか、記事内で詳しく紹介します。

水道水が家庭の蛇口に届くまで

蛇口をひねると水道水が出てくるのは、水道がしっかりと整備されているからです。まずは、水道水が家庭の蛇口へと届く仕組みを3段階に分けて紹介します。

①取水:水道水になる水について

水道水の元となる水は、約75%が地表水、残りの約25%が伏流水や井戸水です。地表水とは、河川や湖、ダムといった地表の見える所に存在する水を指します。伏流水は、比較的浅い地中を流れている水のことです。
また、水道水の水源のうち、約48%はダム湖沼水です。日本各地には色々なダムがあり、水道のシステムを支えています。※1

これらの水源から水を取り入れるために設置されているのが、取水施設です。例えば、川から水をくみ上げるときは、取水堰(しゅすいぜき)という設備で川の水位をコントロールして取水します。川の水には、砂や泥、ゴミ等が混ざっているため、まず沈砂池(ちんさち)という人工池に送られ、これらを沈めて取り除く作業がおこなわれます。

しかし、砂や泥、ゴミ等を取り除いただけの水は、十分にきれいとはいえません。水はその後、飲める状態にするために、浄水場へと運ばれます。※2

②浄水:浄水場の仕組み

河川から取り入れた水は、そのままでは安心して飲むことはできません。そのため浄水場でろ過や消毒等、安全性の高い水にするための処理をおこなっています。

一般的な浄水の流れは、以下のとおりです。※3

▼浄水施設の一例
・沈砂池で取り除ききれなかった細かい土等を集めるために凝集剤(ごみ等をまとめる薬剤)を入れる

・凝集剤を入れた水をかき混ぜてフロック(かたまりになった濁り)を作る

・沈殿池でフロックを沈めて取り除く

・砂や砂利の層で水をろ過する

・消毒のための塩素を入れる

・きれいに浄水された水を配水池に貯めておく

このようにいくつものステップを経て、安心して飲める水ができあがります。

高度浄水処理とは

水道水の安全とおいしさをより追求するために、東京都では平成元年から高度浄水処理設備の整備を開始し、およそ25年をかけて全浄水場に導入が完了しました。

高度浄水とは、通常の浄水処理よりもさらに不純物等を除去できる処理のことです。強力な酸化力を持つオゾンと、吸着機能に優れた生物活性炭を活用し、従来の処理では取り除くことが難しかったごく微量のトリハロメタン等も除去できるようになりました。

この処理では水道水特有の臭いや有機物も除去できるため、より安全でおいしい水を提供できています。

③給水:家庭の蛇口に水が届くまで

浄水場できれいになった水は、いったん給水所の配水池に貯められたのち、ポンプによって送り出され、配水管を通って工場や店舗、家庭へと届けられます。水道の使用量は常に一定ではなく、時間帯によって変動するため、ポンプによって送り出す水の量や圧力を調整しています。
なお、配水管とは、水道水を各家庭の前の道路まで届ける管のことです。配水管から家庭の蛇口へとつながっている管は給水管といいます。※3

水道水はどこから来るのか、どうやって届けられるのかを意識することなく使っている人も多いでしょう。しかし、水道水が届くプロセスに目を向ければ、多くの技術や労力によって水道の仕組みが支えられていることがわかります。

日本の水道水は高品質

「日本の水道水は品質が高くて安全」という話を耳にすることがありますが、これは事実です。ここでは、日本の水道水の品質について紹介します。

水道水をそのまま飲める国は少ない

世界に目を向けてみると、水道水をそのまま飲める国は決して多くありません。2024年の時点で水道水をそのまま飲める国は、日本のほかノルウェーやスウェーデン、フィンランド等、わずか9か国のみです。
また、そのまま飲めるものの注意が必要な国は33か国で、アメリカやカナダ、オーストラリア等が該当します。※4

海外に行くときは、日本国内と同じ感覚で水道水を口にすることがないよう、注意が必要です。

水を安全に飲めるようにするには、大腸菌をはじめ、人体に悪影響を及ぼす様々な病原菌を殺菌しなければなりません。その点、日本の水道水は浄水場で塩素によって消毒されているため、安全に飲むことができます。

しかし、塩素は消毒に欠かせない一方で、濃度が高いと人体に影響があります。そのため、日本では蛇口での残留塩素濃度を1mg/L以下に抑えるよう定めています。これはWHOのガイドラインである5mg/Lを大きく下回る数値です。※5

水道水の検査項目

日本の水道は、厚生労働省及び環境省、国土交通省によって管理されています。水道水の品質を保つために定められている検査項目は、次の通りです。※6

・水質基準項目と基準値 (51項目)
・水質管理目標設定項目と目標値 (27項目)
・要検討項目と目標値 (46項目)

また、水質管理目標設定項目のひとつとして、115物質の農薬がリストアップされています。※6

このように水道法では、水道水の安全性を保つために、検査項目及び基準値・目標値が定められています。厳しい基準が守られているからこそ、日本の水道水は安全なのです。

さらに、各都道府県の浄水場では、安全性に加えておいしさも追求した取組みを進めています。例えば東京都では、国の基準よりも高いレベルの「おいしさに関する水質目標」を設定し、そのまま飲んでも味や臭いが気にならない水道水を提供しています。※7

水道水の成分

水道水には、微量のミネラル成分も含まれています。水道水に含まれる主なミネラル成分は次の通りです。

・ナトリウム
・カルシウム
・マグネシウム
・鉄
・亜鉛
・銅
・マンガン
・セレン 等※8

ミネラル成分が多く含まれているほど水の硬度が上がります。関東周辺及び沖縄県の水道水は比較的硬度が高いのに対し、北海道や東北地方は低めです。※9

水道水の品質基準は全国一律で、塩素による消毒も同じようにおこなわれています。その一方で、それでも地域によって味に違いがあるのは、ミネラル成分の含有量、つまり水の硬度が違うことが一因となっています。

水道水の塩素消毒って?

日本で水道水の塩素消毒が始まったのは、1921年のことです。コレラや赤痢、腸チフスといった水を介してうつる伝染病を予防するための対策として取り入れられた歴史があります。※9

東京都では翌1922年から塩素消毒が始まり、実際に伝染病患者が大幅に減りました。
水道法で「蛇口で検出される残留塩素濃度が0.1mg/L以上」という基準が設けられたのは、1957年のことです。

なお、水道水に含まれる塩素が人体へ与える影響については、WHOのガイドラインでも5mg/L以下であれば問題ないとされているため、日本の水道水のレベルで心配する必要はありません。※5

有機フッ素化合物(PFAS)って?

昨今では、水道水から「PFAS(ピーファス)」が検出されたというニュースを目にすることが増えてきました。

PFASとは、人工的に作られた有機フッ素化合物の総称です。水や油をはじき、熱によって分解されにくい性質があり、長年にわたって消火剤や包装材、コーティング剤といった身近なものに使用されてきました、しかし分解されにくく、水や土の中に残り続けるため、人体への影響が懸念されています。※10

そのため、全国の自治体では水道水に含まれるPFASの調査や対策が進められています。

例えば東京都にある各浄水場での検査結果は、定量下限値である5ng/L未満がほとんどです。場所によっては5ng/Lを超える数値となっているケースもありますが、暫定目標値である「合算で50ng/L」は下回っています。※11

気になる場合は、自分が住んでいる自治体の水道局の公式Webサイトをチェックしてみてください。

日本は江戸時代から水道の仕組みがある

日本の水道の歴史は長く、江戸時代から存在していました。江戸時代の水道は「上水」ともいわれ、水が石や木で造られた水道管を通って井戸に入り、そこからくみ上げて飲料水や生活用水として使用する仕組みでした。

水道の起源は天正18(1590)年、徳川家康の入府で江戸時代に入るころに造られた小石川上水だといわれていますが、確実なものは徳川家光の代で完成した神田上水です。その後、上水の整備は進み、江戸時代の後半には神田・玉川の2つの上水が多くの人々の生活を支えました。※12

現在も玉川上水は残っていて、水道原水の導水路等として使われています。※13

水道水を安心して使用するために



日本の水道水は安全性に優れていますが、より安心して使用するために知っておきたいポイントがあります。ここでは、水道水の保存期間や蛇口から出たあとの水の扱い方について見ていきましょう。

水道水の保存期間

「冷たい水が飲みたいから冷蔵庫に入れておきたい」等、容器に入れた水道水を保存したいという方もいるでしょう。しかし、水道水は塩素で消毒されていますが、いつまでも消毒効果が持続するわけではありません。

東京都水道局は塩素の消毒効果を考慮して、「常温で3日、冷蔵庫で10日」を保存期間の目安としています。※14

ただし、上記の目安は清潔な容器を使って雑菌が入らないようにきちんと保存ができている場合の話です。できるだけ早めに消費して、使いきれなかったくみ置きの水道水は掃除や洗濯に使用しましょう。

水道水で目を洗っていいの?

かつてはプールに入ったあと、水道水で目を洗うことが望ましいとされていて、学校のプールには洗眼用の水道が設置されていたこともあります。
しかし現在では、残留塩素濃度が0.4~1.0mg/L のプールで水泳をする際には目の粘膜を守るためにゴーグルを着用することが望ましく、水泳のあとの水道水による洗眼も積極的には推奨されていません。※15

プールで泳ぐときはゴーグルを着用したうえで、目を洗いたいときは市販の目薬や専用の洗浄液等を使うようにしましょう。

水道水の消毒の臭いが気になるなら

水道水の安全性を維持するには、塩素消毒が欠かせません。しかし、「残留塩素の臭いが気になるので、水道水をそのまま飲むのは苦手」という方もいるのではないでしょうか。

水道水をおいしく飲むには、残留塩素やPFASを取り除ける浄水器や浄水型ウォーターサーバーの導入がおすすめです。タンクに水道水を注いでおくだけで、おいしい冷温水をいつでも用意できます。また、そもそも消毒用の塩素が入っていない天然水が届く宅配型ウォーターサーバーもあります。

日本の水道水の残留塩素は健康に影響のない濃度ですが、味や臭いの感じ方は人それぞれです。水道水の臭いが気になるときや、手軽においしい水を飲みたいときは、浄水型ウォーターサーバーを検討してみてください。

参考文献

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